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時計修理・
メンテナンスのコラム

天真が折れると、時計はどうなるのか

はじめに

昨日までは普通に動いていた。衝撃を与えた覚えもない。それなのに、今日になって突然止まってしまった。

時計の修理相談の中で、こうしたケースは決して珍しくありません。原因を調べていくと、テンプの中心にある「天真」が折れていた、という事例に行き着くことがあります。

本記事では、天真とは何か、折れると時計の中で何が起きるのか、そして、なぜこのトラブルが特殊修理に分類されるのかを、修理現場の視点から解説します。

天真とは何か時計のリズムを支える重要な軸

天真とは、テンプと呼ばれる振り子の中心にある、非常に細い軸のことです。時計は、このテンプが一定のリズムで往復運動することで、正確に時間を刻んでいます。

常に負荷を受け続ける部品

天真は、時計が動いている限り一瞬たりとも休むことなく負荷を受け続けます。直径は髪の毛よりも細く、非常に繊細でありながら、精度と安定性を支える中枢的な存在です。

天真が折れると起きる現象

天真が折れると、テンプは本来の位置関係を保てなくなります。その結果、時計には次のような症状が現れます。

よく見られる症状

完全に止まる。わずかに動くが、すぐ止まる。姿勢によって動いたり止まったりする。

重要なのは、天真が折れる瞬間に大きな衝撃や音が伴うことはほとんどない、という点です。多くの場合、内部で進行していた負担が限界を超え、ある瞬間に破断します。それが「突然止まった」と感じられる理由です。

なぜ天真は折れてしまうのか

天真が折れる原因はひとつではありません。

主な原因

長年の使用による金属疲労。過去の衝撃。わずかな歪みを抱えたままの使用。潤滑状態の悪化。

第5回で解説した「小さな違和感」を抱えたまま使い続けた結果、天真に過度な負担が集中し、限界を迎えるケースも多くあります。天真の破損は、事故というよりも、内部で積み重なってきた負担が表面化した結果であることがほとんどです。

天真が折れると「調整」では済まなくなる理由

精度が不安定なだけであれば、調整によって改善できる場合もあります。しかし、天真そのものが折れている場合、調整では対応できません。

特殊修理が必要になる理由

テンプを支える軸が失われているため、根本的な修復が必要になります。この段階では、一般的なオーバーホールの範囲を超え、特殊修理の領域に入ります。

モデル紹介SEIKO 45GS1968–1973年Cal.4520 / Cal.4522

1960年代後半に登場した SEIKO 45GS は、毎時36,000振動という高振動で動作する先進的な設計の時計でした。

高振動がもたらす精度と負荷

高振動によって高精度を実現する一方で、テンプと天真には大きな負荷がかかります。長年使われてきた個体では、天真に金属疲労が蓄積し、ある日突然折れてしまうケースが見られます。前日まで問題なく動いていたにもかかわらず突然止まる、という現象は、この構造理解で説明できます。

五十君商店が考える天真破損との向き合い方

五十君商店では、天真が折れていることが分かった時点で、すぐに結論を出すことはありません。

確認するポイント

折れた天真の状態。テンプや受け石への影響。周辺部品の摩耗具合。

これらを一つずつ確認したうえで、その時計にとって無理のない修理方法を検討します。天真の修理は、単に部品を交換する作業ではなく、時計全体のバランスを取り戻す工程でもあります。

修理のご相談について宅配修理・来店予約のご案内

天真の破損は、外から見ただけでは判断できません。五十君商店では、時計の状態を確認したうえで、無理のない修理方法をご提案しています。

全国対応の宅配修理サービス

全国から時計をお預かりできる宅配修理サービスをご用意しています。専用の梱包キットを無料でお届けし、往復送料もかかりません。

宅配修理の詳細はこちら
https://www.igimi.mom/packing-kit/

店舗でのご相談・来店予約について

お近くに店舗がある場合は、直接お持ち込みいただいてのご相談も可能です。来店予約・店舗情報はこちらhttps://www.igimi.mom/

対応ブランドについて

五十君商店では、SEIKO をはじめとする国内外の幅広い時計ブランドのオーバーホールおよび修理に対応しています。メーカー対応が終了したモデルや、20年以上前の旧型モデルについても、自社工房内での部品加工や調整によって対応可能なケースがあります。

SEIKO の修理・メンテナンスについては、ブランドページもあわせてご覧ください。https://www.igimi.mom/brand/seiko/

まとめ

天真の破損は、突然起きるトラブルのように見えて、内部で進行していた負担の結果であることがほとんどです。

違和感の段階で状態を確認できれば、修理の選択肢を残すことができます。一般論で判断せず、実際の状態を確認すること。それが、時計を無理なく、長く使い続けるための第一歩になります。

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